▶シーツとふとん
一晩寝て付けたシーツのしわを撮影、それを原寸に写真製版し、シルクスクリーンで二枚のシーツに刷り、ー枚はふとんに被せ、他のー枚はふとんに並べて壁と床に張り渡した。
日常生活の中の固定観念化した意識を撃ち、自由で新鮮な心を回復させるきっかけを創る為に、真実のしわの様に見えるしわが、実は見せかけのしわであって、如何に情報(映像)が頼りないものかを提示、批判したものである。
シーツのしわの映像を原寸に拡大し、布に刷る為に、大きなスケールを表現出来る機動カと、支持体の素材に対する順応性に優れたシルクスクリーン技法を使って、 可変的な素材と適合ー致させた。
現代のありあまる物質や映像(情報)の不確実性を、私の日常生活の中から抽出、 浮彫りにし、不確かな物事に囲まれて生きる私が、それ等の情報を使って、ともすれば情報の奔流に押し流されそうになる自分を、如何に有意義にそのマイナス面をプラスに転換出来るかを具現化したものである。
2001年11月23日
島州一
▶カーテン
1960年後半頃より、既成の印刷物を画面に入れたり、マスコミの情報そのままを作品の素材として制作して来たが、1973年から10人の作家が各々自宅及び気に入った所で作品を構成発表する点展を足掛け5年程の長さで始めた。
それ以前のマスコミの情報に向かって素材を求めていたものが、この企画により、自分自身の生活空間及び自己内面意識に向かって求められ始めた。 その結果、選び取られる映像も自身で自分の空間をカメラで撮影することになった。
「カーテン」は、点展(オフギャラリー、自宅展)の第1回展の後に発表した作品である。
自分の部屋の北側の窓を素材にして、カーテン(モノ)に窓の映像(コ卜)をシルクスクリーンで刷り重ねることで、モノとコ卜を重ね合わせると云う意図を表現したものである。
この頃、私の現実認識は、<差異>に対する<類似>という言語概念であった。
眠というレンズを持つ私の身体空間と、実際に窓を持つ部屋空間、更に暗箱にレンズという窓を持つカメラの空間の、三者の構造をー致させる表現である。
目に見えない現実のメカニズムを<カーテン>ー<窓>という部屋・私・ カメラの内側と外側の境界を設定することで、その構造に支持体=表現物を与える結果になった。
▶月と企業
1971年芸術生活画廊コンクール展でコンクール賞受賞。第10回現代日本美術展でコンクール賞受賞。1969年、アメリカのアポロ11号計画における、アームストロング船長が人類史上はじめて月に降り立ったシーンに、アメリカ企業100社のランクを重ねた作品。それ以前、自分が持っていた美術への常識にくらべて、これが作品になるとは思っていなかった。現代美術へのデビュー作である。